京都大学大学院情報学研究科 新津研究室

コンテンツ

研究内容 (Research Topics)

研究方針~化学集積素子の実現を目指して~ (Research Strategy)

現在, 『Mooreの法則』と呼ばれる半導体素子の微細化は経済的ならびに技術的限界に近づいてきています. そこで, 半導体に新たな機能を付加した新規デバイスを創造しようという『More than Moore』が世界的な動きとなっています. 本研究室では『More than Moore』にのっとり, 半導体デバイスに物質化学を融合させた化学集積デバイスの実現を目的としています. この化学集積デバイスとは, 『チップ上に化学を集積・化学素子を集積』という2つの意味をもっています. この新しいデバイスの実現のため, 本研究室では様々な方向からアプローチを行い, 以下のような研究を進めています

We are developing chemical-integrated circuits.

The purpose of this research is to realize chemistry integrated circuits where several chemical reactions occur on a chip, which are controlled and detected electrically. This type of device is mainly expected for the use of biomedical applications. In view of the growing concern about such issues as food security, health care, evidence-based care, infectious disease, and tailor-made medicine, a portable gene-based point-of-care testing (POCT) system is needed. For a system that anyone can operate anywhere and obtain immediate results, a new biosensor chip must be developed. Electrical detection using complementary metal-oxide semiconductor (CMOS) integrated circuits has great potential since it eliminates the labeling process, achieves high accuracy and real-time detection, and offers the important advantages of low-cost, compact equipment. Our main target is the realization of chemical integrate circuit to detect very small amount of target molecules by amplifying them on a chip.

化学集積素子

バイオセンサ集積回路 (Biosensor Integrated Circuits)

遺伝子・タンパク質・細菌・ウィルス等の生体分子を半導体集積回路チップを用いて検出する研究が急速に進展しています. 半導体集積回路は1cm角のチップに数10億個のトランジスタを集積することができ, ここに生体分子の検出機能を組み込むことにより, 小型可搬型医療診断検査システムを作ることができます. このシステムはどこでも誰でも短時間で診断することを可能にするとともに, 病院や保健所・顧客データベースに結果を送ることが容易となります.

In view of the growing concerns about such issues as food security, health care, evidence-based care, infectious disease, and tailor-made medicine, a portable gene-based point-of-care testing (POCT) system is needed. For a system that anyone can operate anywhere and obtain immediate results, a new biosensor chip must be developed. Electrical detection using complementary metal-oxide semiconductor (CMOS) integrated circuits has great potential since it eliminates the labeling process, achieves high accuracy and real-time detection, and offers the important advantages of low-cost, compact equipment.

Our target is a monolithically integrated sensor array, which detects all possible biomolecular interactions simultaneously. In each sensor cell, different kinds of probes can be formed for parallel detection. In addition, the same kind of probe can be used to observe the time evolution of the spatial distribution of biomolecular interactions as well as to improve the detection accuracy since biomolecular interactions are a stochastic process.

小型可搬型医療検査診断システム

遺伝子の全情報を解読するDNAシーケンサでは, ヒトの遺伝子情報30億塩基の配列を解読するのに, 従来1週間以上100万円以上を要していましたが, バイオCMOSチップを用いることにより1日10万円で検査することが可能となります. 更に2015年には1時間1万円で全遺伝子情報の解読が可能になると予想されています.

糖尿病やダウン症候群等の多くの病気が特定の遺伝子配列の違いによって引き起こされることが明らかになっています. 感染症や偽装食品の検査においても, 全遺伝子情報を解読するまでもなく, 特定の遺伝子配列が検出できれば良いです. この場合, 数100~数1000種の検出ができれば十分であり, 小型可搬型健康診断システムの実現が可能です.

研究室で開発したバイオセンサ集積回路

バイオセンサ集積回路には, 電位検出, 電流検出, インピーダンス検出の3つの方法によるセンサアレイ集積回路があります. アプリケーションに応じて最適な検出方法が異なり,すみわけがされています. 本研究室では3種のすべての検出方法について取り組んでいます. また, 溶液を制御するためのマイクロ流路についても取り組んでいます.

バイオセンサ集積回路における検出方法

バイオ・ヘルスケア・医療応用に向けたバイオメディカルIoT

バイオセンサ集積回路に無線通信機能を搭載させた、バイオメディカルIoTの研究開発を行っています。より生活を豊かにし、快適なバイオメディカルIoTの開発を目指し、バイオ燃料電池と低消費電力CMOS集積回路を組み合わせた電力自立動作の実現を目指しています。具体的には、涙液糖から発電とセンシングを行って電力自立を実現したメガネ型端末不要のコンタクトレンズ型継続血糖モニタリングや、乳酸から発電とセンシングを行って電力自立を実現したパッチ型継続乳酸モニタリングの基盤技術確立に成功しています。

We are developing biomedical IoTs employing biosensor integrated circuits with wireless communication. For comfortable usability, energy-autonomous property associated with biofuel cells and low-power CMOS LSIs is our target. For examples, we have demonstrated glasses-free energy-autonomous continuous glucose monitoring contact lens and battery-free patch-type continuous lactate monitoring.

バイオセンサ集積回路(電位検出)

電位検出型のバイオセンサ集積回路の一種である, 拡張ゲートFET型レドックスセンサについて研究を行っています. このセンサは, FETのゲートに金電極を形成し, さらに機能分子を修飾することで, 溶液中で起こる酸化還元反応を検出することができます. 酸化還元反応が検出できると, 酵素センサとして応用することができ, 酵素の種類に応じて様々な生体分子を検出することができるようになります.

下に, 本研究室で開発されたセンサのモデル図と実際に酵素を用いてグルコースを測定した結果を示します.

拡張ゲートFET型レドックスセンサを用いたグルコース検出

バイオセンサ集積回路(電流検出)

生命工学の発展に伴い, 「測定系を乱すことなく」,「同時に」,「多点で」生体分子を測定する手法が求められています. 既存の手法である光学測定では, 標識となる分子を修飾する必要がある. また, 大型の装置が必要であり, 測定にかかるコストが高いといったデメリットがあります. これに対して, 本研究で試みている電気化学測定は, 選択性が高く, 微細加工との相性も良いという特徴があります. 本研究の目標は, アレイ化に適した電気化学測定回路を提案し, 実際に作製したセンサを用いてリアルタイムの生体分子計測を行い, 生体分子の濃度分布を二次元画像化することです. 応用として, 細胞同士のクロストークの測定や家畜受精卵の高速スクリーニングが期待できます.

電位検出型バイオセンサ集積回路

バイオセンサ集積回路(インピーダンス検出)

生体分子のインピーダンス検出では, 電極上に抗体を固定化し, その抗体の対象となる生体分子を溶液に流すと, 電極上に生体分子が吸着します. この時, 溶液中を流れる電流は生体分子によって遮られるため, 減少し, その結果, 溶液のインピーダンスが増加します. この増加量は生体分子の大きさによって変わるため, 生体分子の種類の特定が可能です. この検出法は, 細菌・ウィルス数のカウントなどへの応用が期待されています.

インピーダンス検出型バイオセンサ集積回路

バイオセンサ集積回路(マイクロ流路系による測定)

種々の化学反応をチップ上に集積するためには溶液をアイソレーションする必要があり, マイクロ流路の形成が必須となります. 生体分子が1分子だけ通過できる流路を形成することによって, 1分子が通過するときの信号の変化量から生体分子のフロー検出が可能となります. 本研究では, 材料・流路の形状など様々な観点からマイクロ流路の最適化を行い, フロー検出を目指しています.

マイクロ流路系による測定

pagetop

入室希望者の方へ For candidates

新津研究グループでは, 上記のテーマを中心としてさまざまなテーマに取り組んでいます. 最先端の研究を行うと共に, 輪講などを通じて集積回路設計やデバイス物理といった基盤的な学問を体系的に学ぶことができます.

研究テーマはメンバーの希望を考慮しつつ教員と相談の上決定します.

事前に新津(niitsu@i.kyoto-u.ac.jp)までメールをいただければ, 教員が対応します.

In our laboratory, we are doing various research topic from CMOS LSI design to electrochemical experiment. If being interested, please send e-mail to Prof. Kiichi Niitsu (niitsu@i.kyoto-u.ac.jp).

pagetop